愛し君へ

「春の月9は泣かせます」と銘打たれた「愛し君へ」は、期待以上の良作。序盤、蝉の鳴き声や、浴衣や提灯や灯篭流しと、さりげない演出で蒸し暑さを体感させられた。そういった些細な部分から雰囲気を伝えられるのは、作品の力だと思う。
正直、前半の藤木直人の幾つかの台詞には、「プライド」が再開したようでゾッとしたが、後半は無し。去年の夏、「Dr.コトー診療所」を欠かさず見ていたのだが、この春の宣伝番組で泉谷と時任が並んでいる姿を見て、そのまま二番煎じにしてきたような気がして、ちょっとイヤな気持ちでいたが、今日の第一話を見たらどうでも良くなった。泉谷しげるは、小難しい親父の役どころがすっかりと板についた。いかりや長介亡き後を引き継げる、数少ない異色個性派俳優の一人である。仮に、娘や孫の成長を生き甲斐とする好々爺の役どころが回ってきても、きっときっちりと感動的な台本をこなせると思う。
あとは、この雰囲気を3ヶ月大切に維持してもらいたい。