青春アカペラ甲子園 全国ハモネプリーグ

よどんだ空が晴れ渡るような結末でした。こういう感動をカタルシスと呼ぶのでしょうか。
甲子園に3年連続出場するも、過去2年はあと一歩優勝に及ばなかったチーム。最後の挑戦。沢山の努力、悔しい思い、様々な思いを込めて最後に本当の力を発揮したい。舞台は整い、彼らの強い思いに応える番組側の演出の妙が込められていました。でも、喜びを得るというのは難しいもので、それがあっさり叶ったり、力を出し尽くさずに勝ち得てしまったりすると何か足りず、ともすれば過剰な演出による茶番劇になることもままあります。そういった意味では、舞台にふさわしい対戦相手にめぐまれたことが感動を生んだ最大の要因だったのかもしれません。
私はこの番組を2時間通して見るのが初めてでした。特にひいき目も無く、ただただキレイな歌を聴きたいだけで見ていたのですが、決勝の3チームはいずれ劣らぬ実力の持ち主でした。気がつくとそれぞれの巧みな技術や圧倒される声量、そして高い完成度に引き込まれ、点数のつけようがないという気持ちでいました。そして、そうなると最後は気持ちの勝負になるのだと気付かされます。勝者は、はじめに「テッペンを目指す」と言いました。レパートリーがバラード曲のみだという彼らは、一回戦に『ラヴ・イズ・オーヴァー』を、決勝に『さよならの向う側』*1をそれぞれ選びます。けれんみのない、魂のこもった演目だったと思います。
そんな彼らに対し、表彰の場で審査員のつんくは、「泥んこまみれになって野球やってる奴らのよう」と例え、「最後9回裏で逆転した野球を見せられたような感動があった」と評しました。相手が手堅い守備やセオリー通りの攻撃を見せる中、テッペンをとりたいという彼らの魂は、グラウンドいっぱいに懸命に走って、ボールを追いかけ、歯を食いしばってホームベースに頭から突っ込む、正に泥んこ野球の精神。「甲子園」と銘打たれた番組で展開された好ゲームに対する素晴らしい賛辞だったと思います。
奇しくも、つんくは「この曲を歌えるなら」と志願して、山口百恵のトリビュート・アルバムに『さよならの向う側』で参加しています。そのつんくの心の琴線に触れる、素晴らしいサヨナラヒットであったと言えるでしょう。

山口百恵トリビュート Thank You For...

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*1:はてなキーワードで「さよならの向こう側」となっているけど、たぶん送り仮名の間違い。