優しい時間 #7

マスターも拓郎の居場所を知り、そっと姿をのぞきに行っていました。
以前、拓郎が森の時計まで様子をうかがいに行き結局声をかけられなかったのと同様、マスターも姿を見るので精一杯でした。二人とも、お互いにお互いのことを思いやっていながら、すれ違う気持ちがなんとも切なく感じられました。このまま話が進んで、果たして二人が互いに正面から目と目を向き合い自分の気持ちを伝え合うことはできるのか、ちょっと心配になるくらいいじらしい。
ところで、主題歌となっている平原綾香の「明日」は、実はドラマが始まる以前から私の癒しソングだったりします。倉本聰がテーマ曲に選んだと聞いたとき、ちょっと妬ましく思ったほど。ヒット曲「Jupiter」よりも気持ちに染み入ってきて、ほっとさせてくれる曲です。
きっかけは格好悪い話なのですが、車で渋谷に行く用事があって誤って神泉あたりの細い路地に迷い込んでしまって、土地勘がないのでハラハラしているところでようやく赤信号で一息ついた時に、何か音楽でも聴こうとあまり見ずに入れたCDが彼女のアルバム「Odyssey」で、一曲目に流れてきたのがこの曲でした。「落ち着いて」と優しく声をかけられたような気になりました。
「明日」は別れをテーマにした曲です。しかし二人がそれぞれの道に進む前向きな別れ。だから切ないけれど心強い。
ドラマのこの先の展開を推し量ることはできませんが、マスターと拓郎は仲直りできたとしても、共に暮らしたりはせず、それぞれ別々に自分の生活を営むのではないかと、この曲を聴いてふと考えました。