TRICK

堤幸彦演出にやられたというべきなのでしょうか。
終始、怪しい名取裕子とそれを暴く仲間由紀恵という構図があり、それがじわじわと解かれていきました。早く終わろうと思えば1時間に縮めることもできる作品だったんじゃないかと思うのですけど、2時間余の時間に引き込まれてしまいました。トリックが巧妙だったり大袈裟だったりするわけでもありません。あばく理論が緻密なわけでもありません。でも、2時間余りの時間にピタリと治まるのはやはり、演出の妙だと思います。
劇の舞台は山奥の山荘で、舞台演劇でも成り立つような狭い舞台でシナリオは進んでいきます。そこで特に仲間由紀恵が特別の活躍をするわけではありません。しかし、一人一人の死を追うごとに何かを掴んでいく冷静な仲間由紀恵の姿に名探偵の姿を見ることができました。
結果、犯人である名取裕子は自害しますが、そこまで彼女を追い込んだシナリオの妙を褒めるべきかなと思いました。